【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
『アメリカ経済を支える、タキモトグループの次期後継、日本で花嫁候補を選定――首相を交えての始終和やかな会見――素晴らしい才能と将来性に期待――』
「あ、この人、首相なんだ。どうりで見覚えが」
「優ーー花、現実逃避は解決にならないよ?」
「ひーーん」
そんなこと言ったって。
現実に思えって方が、無理だと思う。
「ってことで、御堂に勝ち目は無いね。優花、玉の輿、おめでとう!」
「玲子ちゃーーーーん」
面白がってる。
絶対、全身全霊で、面白がってるーーーっ!
「あ、もう、こんな時間だー、授業に遅れるよ、優花!」
二ヒヒと、人の悪い笑みを残して、玲子が廊下に姿を消す。
ガックリうなだれたまま、優花は、その後を追おうと鏡の前から一歩、二歩、足を進める。
その時、
甘い、花の香りが、ほのかに漂い、
視界の端っこに、何かが、引っかかった。