【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
網膜に刻まれたのは、鏡に映った、酷く、その場にそぐわない白い色彩。
「――ん?」
何だろう?
ほんの軽い気持ちで、一歩、二歩。
反射的に身体を元の場所に戻し、鏡に向けた視線が、ピキリと固まった。
えっ……。
ええっ!?
何の変哲もない、トイレの鏡。
もちろん、写っているのは、覗き込んでいる自分の顔だ。
驚愕に見開かれた瞳の中に、自分の顔が写りこんでいる。
「ナニ……コレ?」
髪が、はっきり目に見えて、変だった。
まず、色が普通に考えてありえない、白。
それも、目にも眩しい純白だ。
そして、長さもおかしい。
肩甲骨の中ほどしかないはずのセミロングの髪が、どう見ても腰の辺りまで伸びている。