【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

網膜に刻まれたのは、鏡に映った、酷く、その場にそぐわない白い色彩。


「――ん?」


何だろう?


ほんの軽い気持ちで、一歩、二歩。


反射的に身体を元の場所に戻し、鏡に向けた視線が、ピキリと固まった。


えっ……。


ええっ!?


何の変哲もない、トイレの鏡。


もちろん、写っているのは、覗き込んでいる自分の顔だ。


驚愕に見開かれた瞳の中に、自分の顔が写りこんでいる。


「ナニ……コレ?」


髪が、はっきり目に見えて、変だった。


まず、色が普通に考えてありえない、白。


それも、目にも眩しい純白だ。


そして、長さもおかしい。


肩甲骨の中ほどしかないはずのセミロングの髪が、どう見ても腰の辺りまで伸びている。

< 146 / 357 >

この作品をシェア

pagetop