【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
目――、
私の目が、おかしい……の?
もしかして、
さっき、階段から落ちたときに、頭でもぶつけたのだろうか?
パチパチパチと、
意識して強めに目を瞬かせながら、
のろのろと、震える両手を挙げて、耳の辺りから髪の毛を伸ばすように手のひらを下に滑らせる。
いつもと変わらぬ少し硬めの自分の髪の感触は、やはりいつもと変わらぬ胸のあたりで、すうっと消えた。
なのに、
鏡の中の自分の手には、まだ白い髪の毛が絡んでいた。
掴んだ感触の無いまま、フリフリと手を振ってみれば、確かに鏡の中で純白の髪がフサフサと揺れている。
ごくり、
と、我知らず、喉が上下する。
こ、これって、もしかして、心霊現象――、
最悪の結論に達しようとしたその時、
「おい、優花」
「ぎゃーーーーっ!」
聞き覚えのある低音ボイスに名を呼ばれ、優花は絶叫を上げて飛び上がった。