【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「いや、いい。……って良くはないか。変な波動が飛んできたからてっきり……」
「え?」
ヘンナハドウ?
聞き拾った、晃一郎の呟きの意味が分からず、優花はきょとんと目を瞬かせる。
ワシャワシャワシャっと、大きな手のひらで自分の前髪をかき回し、再びため息をついた後、晃一郎は意を決したように、もう一度口を開いた。
「質問を変える。今日、何かいつもと変わったことはなかったか?」
朝、起きた瞬間から、
いや。
起きる前から、変わった事尽くめの今日の出来事を思い出しながら、優花は、晃一郎の質問の意図が分からないまま、すうっと、晃一郎の髪を指差した。
変なこと、ダントツトップは、やはり、今目の前に居る幼なじみの、目にも鮮やかなこの金髪頭だ。
一瞬、うっと言葉に詰まった後、晃一郎は質問を続ける。
「俺のことはいい。他に変わったことは、なかったのか?」
「変わったこと、って言われても」
「大事なことなんだ。ささいなことでもいいから、思い出せ」
「う、うん……」
何だか分からないが、晃一郎の真剣すぎる眼差しに、優花は自分も真剣に考えなければならないと言う義務感に襲われ、一生懸命記憶の糸を手繰り寄せた。