【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

「ええっと……」


とりあえず、晃一郎と手に手をとって逃避行、


なんと、キスしちゃいました!


な夢は、置いといて。


まずは、一つ目、


「体育の時間に、顔面レシーブして、卒倒した」


優花は右の手のひらをパーに開き、数えるために親指を折りこむ。


二つ目、人差し指。


「うーんと、音楽室へ行く途中、誰かに押されて階段から落ちた……でしょ?」


三つ目、中指。


チラリと、晃一郎の、渋い表情を盗み見、


「リュウ君に告られた」


早口に言う。


それと、四つ目は――、


折り込もうとした薬指は、ためらうように途中で止まる。


ついさっき、トイレで起こった怪異現象を思い出し、背筋にゾクリと悪寒が走った。


こ、これは、


これは、気のせいかもしれないし。


うん、言う必要はないよね?


「こんな……感じ?」

< 150 / 357 >

この作品をシェア

pagetop