【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「――優花? おい、優花?」
自分を呼ぶ聞き覚えのある低い声音に、優花の意識は、ゆっくりと浮上した。
ハッとして視線を上げれば、心配げに覗き込む晃一郎の視線とかち合った。
真っ直ぐ向けられているのは、はっきりとした二重の、明るいライト・ブラウンの瞳。
サラリと、
柔らかそうな金色の髪が、端正な目元に落ちかかっている。
慣れというものは恐ろしいもので。
最初は違和感走りまくりだった、この、目の覚めるような明るい金色の頭髪を見ても、あまり驚かなくなってしまった。
右耳につけられた、幅一センチ程の銀色のクリップ式イヤリング、イヤーカーフが、蛍光灯の明かりを受けて、キラリと鋭い光を放っている。
白シャツに、ブラック・ジーンズ、足元は白いスニーカーというラフな服装。
上に羽織っている白衣の胸には、『Dr.御堂晃一郎』と書かれた顔写真入の、ブルーのネームプレートが付けられている。
――ああ、そうだ。
ここは――。
優花は、ゆっくりと、室内に視線をめぐらせた。