【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

リュウの心は決まった。


『彼女』の存在は、晃一郎には伏せておく。


「残る問題は、こっちの方だな」


こつん、と、


リュウは、パソコン画面を、ひとさし指で弾いた。


パソコン画面に映った若干ノイズ交じりの映像。


それは、優花が見た光景を映像化したものだ。


映っているのは、つい先刻、エレベーターの中で優花が出会った女、艶然と微笑む、黒田マリア。


彼女と握手をした瞬間、優花に走った感覚。


あれは、超能力による干渉を受けたための現象だ。


黒田マリアは、直接手で触れることで相手の記憶を読む、接触テレパスと見てまず間違いない。


その能力自体はポピュラーなもので、別に珍しくはない。


問題は、


なぜ、あの場所で、優花に対してその力を使ったのか、だ。

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