【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
ただの偶然か、それとも何らかの目的があっての、必然か。
どちらにせよ、この件は、晃一郎の耳に入れておいた方がいいだろう。
優花の部屋に電話を掛けようと、電話機に手を上したそのとき。
プルル――
プルル。プルル――
突然上がった呼び出し音に、リュウは、眉根を寄せた。
嫌な予感がする。
リュウに、予知能力はないはずだが、こういうときの第六巻は、意外と当たるのだ。
「はい、タキモトです」
『ああ、タキモトくん。すぐにつかまってよかったよ』
ほっと、安堵したように言うその声は、所長の鈴木博士のものだ。
その声音は、普段のこの人物からすれば、だいぶ緊張したものだった。
リュウの中の漠然とした不安が、現実味を帯びてくる。
「どうしました、博士?」