【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

ただの偶然か、それとも何らかの目的があっての、必然か。


どちらにせよ、この件は、晃一郎の耳に入れておいた方がいいだろう。


優花の部屋に電話を掛けようと、電話機に手を上したそのとき。


プルル――


プルル。プルル――


突然上がった呼び出し音に、リュウは、眉根を寄せた。


嫌な予感がする。


リュウに、予知能力はないはずだが、こういうときの第六巻は、意外と当たるのだ。


「はい、タキモトです」


『ああ、タキモトくん。すぐにつかまってよかったよ』


ほっと、安堵したように言うその声は、所長の鈴木博士のものだ。


その声音は、普段のこの人物からすれば、だいぶ緊張したものだった。


リュウの中の漠然とした不安が、現実味を帯びてくる。


「どうしました、博士?」

< 240 / 357 >

この作品をシェア

pagetop