【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


『実は、今からここに査察が入る。たった今、通達があったんだ』


「査察って、保健省のですか?」


『いや、公安の特務二課だそうだ』


ESPを有する者ならば、必ず知っているその機関名に、リュウは、思わず息を呑んだ。


「特務って、まさか……」


公安、


国家公共安全機構は、政府直轄の、内閣総理大臣を長とする、国の安全を守るために組織された機関で、


特務課は、主にESP犯罪を取り締まる、警察のようなものだ。


特務一課は、ESP犯罪対策課。


そして、特務二課は、イレギュラー対策課だ。


イレギュラーが潜伏していると、通報が入った場合、この機関が動くのだ。


それが査察に入る、ということは――。


『おそらく、優花ちゃんの件だろう。残念だが、内部告発があったと見るべきだろうね』


リュウの脳裏に浮かんだのは、エレベーターの女。


それは、確信に近いものだった。


――黒田マリア。


リークしたのは、あの女だ。

< 241 / 357 >

この作品をシェア

pagetop