【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
『実は、今からここに査察が入る。たった今、通達があったんだ』
「査察って、保健省のですか?」
『いや、公安の特務二課だそうだ』
ESPを有する者ならば、必ず知っているその機関名に、リュウは、思わず息を呑んだ。
「特務って、まさか……」
公安、
国家公共安全機構は、政府直轄の、内閣総理大臣を長とする、国の安全を守るために組織された機関で、
特務課は、主にESP犯罪を取り締まる、警察のようなものだ。
特務一課は、ESP犯罪対策課。
そして、特務二課は、イレギュラー対策課だ。
イレギュラーが潜伏していると、通報が入った場合、この機関が動くのだ。
それが査察に入る、ということは――。
『おそらく、優花ちゃんの件だろう。残念だが、内部告発があったと見るべきだろうね』
リュウの脳裏に浮かんだのは、エレベーターの女。
それは、確信に近いものだった。
――黒田マリア。
リークしたのは、あの女だ。