【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

通常、国の機関であるこの研究所に他の機関の査察が入る場合、事前通達があるのが常だ。


公安といっても、所詮は国の機関。


直前の通達という所が、公安側のぎりぎりの譲歩ラインなのだろうが、杓子定規どおりに、通達を出してきてくれたのが、幸いした。


おかげで、優花に関する情報の事前削除も可能だし、逃げる時間も稼げる。


情報の削除は、短時間で可能だから、さほど問題ない。


それよりも、心配なのはあの二人だ。


「晃と、優花ちゃんには?」


『もう知らせてある。今はとにかく、捕まらないことが最優先だからね。急いで外に出る準備をしているよ』


「そうですか……」


つかの間の安寧は、たった今、終わりを告げた。


これから、あの少女が見舞われるであろう嵐の激しさを思い、リュウは、小さなため息をついた。

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