【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「じゃあ、先に廊下に出てろ。すぐにすむから」
自分の存在した痕跡が消えるさまを、優花に見せたくないのだろう。
玄関ドアの前で、晃一郎は、優花に、部屋の外に出るように促した。
「晃ちゃん……」
優花は、そんな晃一郎の気遣いを感じ取り、言葉を詰まらせる。
見たくないものを見ないですむなら、たぶん楽だろうと、優花も思う。
でも、きっと、後悔するような気がした。
どんな心の痛みを伴っても、
大切なものだからこそ、その最後を、この目で見届けたい。
そう、思った。
だから、
「ありがとう、晃ちゃん。でも、私、ここで見てるから」
顔を上げて、まっすぐ晃一郎の目を見つめ、きっぱりと言う。