【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
優花が、つぶれそうな胸の痛みを抱いて、皆の身を案じていたその頃。
公安の査察が、いっせいに執り行われていた。
相手が、一般の企業ではなく国家機関である研究所であるためか、超能力を使っての心理調査は行われずに、
一般の警察と同じような口頭での事情聴取という形で行われたのが幸いした。
個別に事情聴取の対象になったのは、研究所の所長である鈴木博士と、ESPカウンセラーの、リュウ・マイケル・タキモト、
それと、情報処理業務のスペシャリストで、研究所の業務委託を受けている準・公務員扱いの村瀬玲子。
そして、鈴木博士の助手である、御堂晃一郎もその対象になっていたが、姿が見えず。
晃一郎の居所を、公安の担当官に質問された直属の上司である鈴木博士は、邪気のないエンジェルスマイルでニコニコと、
「ああ、あいにく彼は、今日から三日間の休暇に入っていますので、ここにはおりません。
行き先は、聞いてませんねぇ。
プライベートなことまでは、関知してませんので。
え? 今日ですか?
会ってませんよ、ほら、休暇中ですから」
と、一蹴してしまった。