【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
優花は、隣に座る、晃一郎の横顔を、そっと見上げた。
その表情は、いつもと変わりなく、自信満々で活気に満ちている。
優花の視線に気付いた晃一郎は、左手を伸ばすと、優花の頭をわしゃわしゃとかきまわす。
そのついでに、期待の眼で、熱い視線を向けるポチの頭も撫で回す。
ポチは、全身から、『うれしいよー』のオーラを、放出している。
でも、優花は、ポチほど、素直にはなれなかった。
胸の奥底でわだかまっている、この感情を、なんと呼べばいいのか、
優花には、分からない。
「ま、ぶっつけ本番は、かなり無謀だから、ばっちり訓練してからの話だな」
「なんちゃって、実は、行かせたくないんでしょ、御堂は」
茶化して言う玲子のせりふに、優花の心臓は、ひときわ大きく高鳴った。