【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「でも、御堂、あんたは本当は……」
この子のことが、好きなんじゃないの?
口に出しかけた言葉は、声にはならなかった。
玲子とて、晃一郎と同じ気持ちだった。
若くして、その生を終えた親友。
その面影を、色濃く宿すこの子には、彼女の分も、幸せであってほしい。
そう、心から願っている。
別れは、つらい。
だが、この子が不幸になるのを見るのは、もっとつらいだろう。
「損な性分だね、お互いに」
「まあな」
眠りが浅いのか、優花がわずかに身じろぎをした。
「う……ん。晃ちゃ……?」
「うん?」
小首をかしげる晃一郎の視線の先で、寝ぼけた優花が、へにゃっと笑う。
「大……好き……」
「ああ。知ってるよ」
願わくば、この子の未来が、幸多きものでありますように――。
つかの間の、安寧の夜は、それぞれの想いを抱いて、静かにふけて行った。