【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
うつら、うつらと、
夢と現実の狭間を、どのくらいたゆたっていただろうか。
「優花――優花ってばっ」
優花は、自分を呼ぶ聞き覚えのある声に反応して、パチリと目を開けた。
たっぷりと良質の睡眠を取った後の、さわやかな朝の目覚めのような、そんなスッキリとした覚醒。
白い天上と、白い壁。アイボリーのカーテン。
研究所の病室?
それとも、海辺のコテージ?
ううん違う。ここは、高校の――。
「保……健室?」
やけに鮮明な、鮮明すぎるビジョン。
今のは、ただの夢?
それとも……?
あまりにリアルな夢の余韻が冷めやらず、
もしかしたら、今こうして見ているのも夢なんじゃないかという不安がよぎり、思わずギクリと体を強張らせると、
「脅かさないでよ、まったくー!」と、眉根を寄せた玲子の顔が、ヌッと視界に入ってきた。