【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
濃紺のブレザーと、グレーのプリーツスカート。
エンジのネクタイ。
見慣れた、高校の制服姿だ。
栗色ではなく、黒いセミロングの癖っ毛が、フワリと揺れている。
「玲……子ちゃん?」
が、居るってことは、きっとこれは現実。
そんな脈絡のない安心感が、強張っていた体の力をスウっと抜いてくれる。
作家希望の、完全無欠のリアリスト。
我が親友の見事なまでの存在感に、思わず感謝。
「玲子ちゃんじゃないよ。優花ったらいきなり倒れるんだから。さすがのアタシもビビったわ。保健の先生は留守だし、どうしようかと思ったよ……」
そうだった。
トイレで晃ちゃんに呼び出されて、話しているうちに、クラッと来たんだっけ。
「あはは……、ゴメンね。貧血かなぁ?」
あんなスペクタクルな現実が、あるわけないよ。