【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
そう。
たぶんあれは、今までに見たドラマとか漫画の中身がミックスされてできた、ファンタジーな夢。
スーパー超能力者でお医者様な晃ちゃんと、犬猿の仲の玲子ちゃん、
素敵な無自覚乙女キラーの鈴木博士。
やさしい、天使の笑顔の、リュウ先生。
それに、白い翼付のワンちゃん、ポチ。
自分の想像力の豊かさに、思わず苦笑い。
でも、そう安堵する心の片隅に、なぜだか言いようのない痛みが走った。
「大丈夫? 保健の先生、捜してこよっか?」
心配げな玲子の言葉に、ハッとして両腕を胸の前まで上げて、手をにぎにぎしてみる。
「ううん、もう平気。なんだか爆睡しちゃったね。今何時くらい?」
すっかり元に戻った体調を確かめながら、白いパイプベッドに身を起こして質問すると、玲子はキョトンと目を丸める。
「爆睡って、優花。倒れて保健室に運んでから、まだ五分も経っていないけど? ねー、御堂?」
――えっ、晃ちゃん!?
「……ああ、そのくらいだな」
ベッドの足元側。
半分引かれたカーテンの陰から響いてきた、静かな低音ボイスに、ドキンと鼓動が跳ね上がった。