【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

そう。


たぶんあれは、今までに見たドラマとか漫画の中身がミックスされてできた、ファンタジーな夢。


スーパー超能力者でお医者様な晃ちゃんと、犬猿の仲の玲子ちゃん、


素敵な無自覚乙女キラーの鈴木博士。


やさしい、天使の笑顔の、リュウ先生。


それに、白い翼付のワンちゃん、ポチ。


自分の想像力の豊かさに、思わず苦笑い。


でも、そう安堵する心の片隅に、なぜだか言いようのない痛みが走った。


「大丈夫? 保健の先生、捜してこよっか?」


心配げな玲子の言葉に、ハッとして両腕を胸の前まで上げて、手をにぎにぎしてみる。


「ううん、もう平気。なんだか爆睡しちゃったね。今何時くらい?」


すっかり元に戻った体調を確かめながら、白いパイプベッドに身を起こして質問すると、玲子はキョトンと目を丸める。


「爆睡って、優花。倒れて保健室に運んでから、まだ五分も経っていないけど? ねー、御堂?」


――えっ、晃ちゃん!?


「……ああ、そのくらいだな」


ベッドの足元側。


半分引かれたカーテンの陰から響いてきた、静かな低音ボイスに、ドキンと鼓動が跳ね上がった。

< 284 / 357 >

この作品をシェア

pagetop