【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

「優花、大丈夫か?」


心配げな晃一郎にそう問われ、ビクリと、肩が小さく跳ねる。


――や、やだ、何いちいち晃ちゃんの声に反応してるのよ、私!


「あ、う、うんっ。大丈夫! 心配かけちゃってごめんね……」


口の端を上げるけど、うまく笑えず、引きつってしまう。


夢の事が、頭を離れない。


どうしてあんな夢を見たのだろう?


晃ちゃんのこの派手な髪色が、あまりにインパクトが強すぎたから、あんな夢を見た?


ううん、違う。


順番が逆だ。


朝、家の洗面所で晃ちゃんに会うまで、私は晃ちゃんが髪を染めたことを知らなかった。


なのに、明け方。晃ちゃんに会う前に、私は、この髪色の晃ちゃんの夢を見ている。


だから、夢の方が、先――。

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