【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

何か、


大切なことを、忘れている気がする。


ああ、モヤモヤする。


もう少しで思い出せそうなのに、出てこない、


そんなもどかしさだけが、募っていく。


「ねえ、本当に平気なの? なんだか顔色が悪いけど。四時間目の歴史、どうせ自習だからここで休んでたたら? 先生には、アタシから言っとくからさ」


「あ、うん。でも……」


の後に言いかけた、『もう平気だから、私も行くよ』の言葉は、晃一郎がおもむろに放った一言で、喉の奥に固まってしまった。


「村瀬。優花は、俺が家に送っていくから、担任と教科の先生に『体調不良で早退』だって言っておいてくれないか?」


「え!?」


っと、玲子と二人同時にハモリ、やはり同じように目を丸めて、発言者をまじまじと見つめた。


「……御堂」


真面目くさった表情の晃一郎を、玲子は探るように、ジロリと鋭い視線で睨みつけて言う。


「倒れた優花を『お姫様抱っこ』で運んだのは緊急避難だから、まあ良いとして」


げっ、お姫様抱っこ!?


「今日のあんた、なんか変なのよね」

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