【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

そ、そうなのよ!


やっぱり、玲子ちゃんもそう思うよね!?


「その髪の毛だってそうだし、優花を見る目が妙にねちっこいし、今まで絶対、優花とのナチュラル・ディスタンスを崩さなかったのに、いったいどう言う心境の変化?」


ベッドの上に座ったままガッツポーズを作って『うんうん』頷いていると、更に眼光を鋭くした玲子は、ドスの聞いた低い声で言い放った。


「まさか、この機に乗じて、優花をかどわかそうって言うんじゃないでしょうね?」


かっ、


「かどわかすぅ!?」


すっ頓狂な声を上げたのは、晃一郎ではなく、優花。


な、何を言い出すんだ、玲子ちゃん!


棘のある言葉と視線を玲子に向けられた晃一郎は、何も答えず、ただニッコリと口の端を上げた。


まるで、仮面が外れたように、鮮やかに浮かべた会心の笑み。


その表情に、脳裏を駆け抜ける激しい既視感。


髪の色ばかりか、こうして不意に垣間見せる表情が、いつもの晃一郎と明らかに違う。


自身満々で俺様なこの表情は、まるで――。

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