【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「う~ん、やっぱり本人に聞くのが一番か。あ、きたきた、御堂ー!」
晃一郎が教室に入ってきた瞬間、クラス中の視線が集まったけど、それは仕方がない。
なにせあの頭だ。
「こっち、こっちー」
玲子に手招きされて歩み寄ってきた晃一郎は、さぞかし山崎先生に絞られてヘコんでいるかと思いきや、そんなこともなく、
サバサバとした表情で玲子のの質問攻撃を、『うん』とか『まあ』とか、適当すぎる返事でかわしている。
「それにしても、意外とあっさり解放してくれたね、仁王様。たっぷり絞られてくるかと思ったのに」
「まあ、日頃の行いが良いから、俺。『スミマセン、ほんの出来心です、月曜には元に戻しますー』、っつって、放免完了」
皮肉交じりの玲子のセリフに対しても悪びれるふうもなく、
いたずら盛りの少年のように、得意気にニカっと笑って言うその表情をみやり、優花は思わずため息を吐く。
なんだか、それって、ものすごく。
「情けない……」
玲子が優花の心を読んだみたいに、あきれたように呟いた。