【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~


そうだった、こいつは俺様セクハラ大魔王!


何か逆襲してやる良い手はないものかと忙しなく考えを巡らせて、思いついた一つの方法。


緩い抱擁を抜けだし、一歩二歩、後ずさり真っ直ぐ晃一郎を見上げる。


「晃ちゃん……」


「うん?」


ニッコリ特上の笑顔を浮かべて、今度は一歩二歩、晃一郎に近づいて行く。


本当にすぐ目の前で、何事かと目を丸める晃一郎の顔が、面白い。


――優花さん、ごめんね。ちょっとだけ、よそ見しててね。


もうどこにも存在しない、もう一人の優花に心で詫びて、


息を吸って、止めて、三、二、一!


ええいこの、乙女の純情思い知れっ!

< 340 / 357 >

この作品をシェア

pagetop