【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

それは、封印。


記憶を、力を、体の奥深くに眠らせるための、封印の儀式。


ふっと、


近づきすぎてピンボケだった晃一郎の顔が少し離れて、呆然と見つめる優花の目の前ですっきりと像を結ぶ。


くっきり二重の色素の薄い茶色の瞳が少し照れたような色をたたえて、それでも真っ直ぐに優花の視線を捉える。


そして晃一郎は微かに口の端を上げて愉快そうに笑いながら、信じられないような台詞を吐いた。


「餞別にもらっておくよ」と。


もう、自分の敗北を認めざるをえない。


――私は、この人には敵わない。


ああ、私って、つくづく進歩がないなぁ……と、


それにしても、なんでキスで封印なんだ? 


趣味に走りすぎてるんじゃない?




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