【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

聞き覚えのある低音の声。


でも、それは、耳に聞こえてくる音声ではなく、直接頭に響いてきた、


――ような気がする。


「まさか……ね」


そんな、漫画みたいなこと、あるわけない。


そう思いながらも、優花は体を起こし、周囲に視線をめぐらせる。


楽しげに遊ぶ家族連れ。


犬の散歩をしている、老夫婦。


デート中の、若い恋人たち。


ゆるゆると、さまよわせた視線は、一点で止まった。

< 351 / 357 >

この作品をシェア

pagetop