【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
聞き覚えのある低音の声。
でも、それは、耳に聞こえてくる音声ではなく、直接頭に響いてきた、
――ような気がする。
「まさか……ね」
そんな、漫画みたいなこと、あるわけない。
そう思いながらも、優花は体を起こし、周囲に視線をめぐらせる。
楽しげに遊ぶ家族連れ。
犬の散歩をしている、老夫婦。
デート中の、若い恋人たち。
ゆるゆると、さまよわせた視線は、一点で止まった。