【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「もちろん。わかってるよ。グリフォン」
優花は、甘いささやきを、晃一郎の耳元に落とす。
優花は、あの時。
晃一郎に、力と記憶を封印されたあの刹那。
自らに、暗示をかけたのだ。
もう一度、
もしも、この人に会うことが叶うならば、
その瞬間に、すべての記憶をよみがえらせる、
玲子ならたぶん『恋の魔法』とでも、称するだろう、強力な自己暗示を。
「種明かしは、後でゆっくりしてあげる」
優花は、少し大人びたけぶるような笑みを、その顔に浮かべる。
晃一郎は、まぶしげに、目を眇めた。
――本当、男は、女には敵わない生き物だ。