【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

――晃ちゃん、左手! 左手が出てるよ!


日本人の左利き率は、およそ一割ほど。


左利きの矯正が日本ほどされていないアメリカでも、三割程度と言われる。


確率から言えば、リュウは右利きであると考えた方が順当だろう。


右利きの人間に左手を差し出して握手を求めても、普通は咄嗟に反応が出来ずに右手を差し出してしまい、握手は成立しない。


手を出す前に戸惑いを見せるリュウは、ある意味、観察眼が鋭い、と言えるのかもしれない。


「ああ、失礼。俺は左利きなもので」


微妙な空気を読んだのか、晃一郎は、改めて右手を差し出す。


それに呼応して、リュウも手を差し出だしたが、やはり握手は成立しなかった。


リュウが差し出したのも、左手だったのだ。


「いえ、実は僕も左利きなんです。偶然ですね」


ニッコリと、美少年然としたリュウの顔に文字通りの『エンジェル・スマイル』が浮かび、教室の数箇所でミーハーな女子の黄色い声が上がる。


「へぇ、ほんと、偶然。じゃ、せっかくだから利き腕で」


仕切りなおしとばかりに晃一郎が左手を差し出し、リュウの左手に触れた、その刹那。


稲妻のような赤白色の閃光が飛び交うや否や、


バチバチバチ! と、


空気を震わせるような、鋭い炸裂音が、上がった。

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