【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
何、今の……?
網膜と鼓膜に焼きついた閃光と炸裂音。
突然目の前で起こった予測不能な不可解な出来事に、優花は、まるで金縛りにあったように、身を強張らせた。
だが、それも数瞬のこと。
ハッと我に返って、その現象の中心に晃一郎がいたことに気付いた優花は、椅子を鳴らして席を立つと教壇の方へ駆け寄った。
「晃ちゃん!?」
教壇の前には、左手を右手で庇うように押さえながら片膝を付いた晃一郎と、同じような体制で向かい合うリュウの姿があった。
気の毒な鈴木先生は、驚きのあまり腰を抜かしてしまったように、黒板の前で両足を投げ出して呆然と座り込んでいる。
ずれた眼鏡が、更に哀愁を誘う。
『何?』
『な、今の見た!?』
『ねぇ、コレってもしかして、心霊現象……とか?』
『や、やめてよーっ!』
不穏な出来事は、不安を呼び、
不安は、さらなる不安を呼び込み、坂を転がり落ちる石ころのように加速し肥大していく。
一触即発。
ともすれば、集団パニックに陥ってもおかしくはないピリピリとした張り詰めた空気を破ったのは、どこか間の抜けた晃一郎のすっとぼけた台詞だった。