【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
共働きで忙しい両親と外食に出かけるのはかなり久しぶりで、とてもウキウキしていた。
目的地は、市の中心にあるレストラン街。
日本食はもちろん、中華からインド料理まで、世界のありとあらゆる食が味わえることが売りのこのレストラン街に訪れるのは、これで何度目だろうか。
料理好きの『お祖母ちゃんとお母さんコンビ』のおかげで、誕生日には手作りケーキや特製料理が並ぶ家なので、外食自体数えるほどしかしたことがない。
最後に来たのは中学の入学祝いで、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんも一緒。
和風料亭で、珍しい『豆腐料理尽くし』を堪能した。
うん、あれはとっても美味しかった。
今日は、何にしようか?
中華も捨てがたいし、イタリアンも食べてみたい。
エビチリ、フカヒレ、春巻、スパゲッティー、ステーキ……。
うう~っ、迷うなぁ。
料理を選ぶ権利を貰えた優花は、いつものごとく優柔不断の虫が発動して、この期に及んで何料理にするか決めかねていた。