【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
二時間目の体育。
通常は、男女別に行われる授業は、ニューフェイスの留学生、リュウとの親睦を兼ねての、男女混合バレー大会となった。
バスケットと言う案も出たが、多数決で、男女の体力差が出にくいバレーに決まったのだった。
適当に分けたチーム編成で、ただの偶然かなんの策略か、優花はリュウと同じチームになった。
おまけに、晃一郎も一緒だったりする。
「この、寝坊助ー」
と、晃一郎には、頭をグリグリ掻き回されるし、リュウはといえば、なんとなくよそよそしい。
優花を挟んで、晃一郎とリュウ。
教室の悪夢再びだ。
「さっきは、ゴメンね、リュウくん」
ゲーム開始直後。
たまたま隣り合った時に、心から詫びる優花に向けられるリュウの表情は柔らかい。
「気にしないで。授業って、眠くなりますよね」
でも、最初は感じなかった微妙な距離感が、否が応にも、自分がしでかしたことを、優花に実感させる。
今日は、もうぜったい居眠りしないぞ!
そうすれば、あの夢の続きを、見ることもないんだから。
よし!
と、ゲームに集中しようとしたその時。
バシュッ! っと、
斜め前方で、敵方前衛の男子がスパイクを決めた重い打撃音が上がった次の瞬間、
ゴイーン!と、顔面にものすごい衝撃を感じる間もなく、世界は暗転。
そして、
優花の意識は再び、深い眠りの中へ引き込まれていった――。