【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「もう少しだから頑張れ!」
ギュッと握る手に力を込められても、再びふるふると頭を振った。
――だって、
このまま行けば、そこにあるのは『別れ』。
なら、それなら、
最後までこのまま一緒にいたい――。
「っ……」
言葉にできない想いが涙の雫となって瞳から溢れ出し、止めどなく頬を伝い落ちる。
立ちすくみ、ただ声を殺してしゃくり上げる少女を、彼は優しく引き寄せると、まるで壊れ物を扱うみたいにすっぽりと包みこんで、少女の頭にそっと顎を乗せた。
冷えた体に、じんわりと染み渡る彼の体温。
そのぬくもりに身を預けながら、やはり少女はなす術もなく泣くことしかできない。
「優花《ゆうか》……」
少し困ったように、
そして諭すように、彼は少女の名を呼ぶ。