【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

分かっている。


これは、誰でもない少女自身が選んだこと。


それでも、胸が痛い。


この期に及んで、このぬくもりを手放してしまうことが、迫りくるモノよりも怖いなんて。


――私っていつもこうだ。


優柔不断で、決意したつもりでも、すぐに心が揺らぐ。


こんなことじゃいけない。


残された時間が少ないなら、泣き顔でなんていたくない。


ほらっ、しっかりしろ


如月優花《きさらぎゆうか》!


元気なのが、あんたの取り柄でしょうが!


顔を上げて、前を向かなきゃ!――


ギュッと唇を噛んで自分に気合いをを入れ、精一杯の笑顔を作って、どうにか顔を上げる。


「ごめ……」


えっ?


詫びを言おうと開きかけた唇へ、不意に届いた柔らかい感触に、思わず思考が止まった。

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