【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
晃一郎と同じく、玲子も博士には、とても礼儀正しい。
なんとなく、ここで最強なのは、鈴木博士なんじゃないかと思う。
年上だということだけじゃなく、あのエンジェル・スマイルで穏やかに言われたら、優花だって、たぶん『YES!』としか言えない気がする。
「そうなのよねぇ。
あの無邪気な少年のような瞳で言われたら、さすがのアタシも、反論できないわぁ。
無自覚な乙女キラーなのよね、あのおじさま。
愛妻家で子煩悩なのもポイント高いし……」
ベッドサイドのパイプ椅子に陣取った玲子はそう言って、ベットに横たわる優花に向かって、うんうん頷いている。
「あ、あの……」
考えていることに反応して答えてくる、ということは、やっぱり。
「ああ、アタシも一応超能力者の端くれなの。
最も、全人類で一番多い最低のFランクのテレパス、って、こうして他人の心を読むくらいしかできないんだけど。
ごめんね、勝手に心を読んじゃって。
マナー違反だね」
そう言って、玲子はエヘっと舌を出した。
なんだか、晃一郎同じようなことを言うので思わず笑ってしまう。