【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「あ、ううん、いいの。そんなに大したことは考えてないから」
あははと、手を振ろうとしたら、手が少ししか上がらない。
――そうだった、私の体は、リハビリが必要だったんだ。
一連の様子を見ていた玲子は、力なく胸の上に投げ出してしまった優花の手に自分の両手を重ね、励ますようにギュッと力を込めてくれた。
「不安だと思う。
けど、博士も御堂君も、アタシもついているから。
イレギュラーでも、あなたは優花。
アタシの親友なんだからね。
それを忘れないでいて」
真っ直ぐな瞳に、嘘や偽りは見えない。
そう、優花にだって分かっている。
この人は異世界の初めてあった人。
でも、この人の魂は、確かに玲子のものだ。
信じていい人だ。
晃一郎や博士と同じように。
「ありがとう……」
その手の温もりがやたらと胸にしみて、なんだか、鼻の奥がツンとしてしまう。
「あ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど……」
気を紛らわせようと、さっき博士に聞きそびれていたことを、玲子に質問することにする。