S系紳士と密約カンケイ


 薄暗い部屋の中、足元に目を落とせば、昨日着ていた服が脱ぎ散らかしてあった。正確には服だけでなく、ブラジャーやストッキングが散乱していて、その惨状は余計頭痛を酷くする。

 無造作に投げられたそれらの後かたづけをしなければと思いつつ、取りあえず見ないことにする。

 実は部屋の惨状よりも、昨日の自分の行動が気になっていたのだ。


 会社の三期先輩であり、よき友人でもある村野菜摘と九時半ごろまで飲んでいたのは記憶している。
 が、しかし、問題はその後……いくら二日酔いの頭を巡らせても、柚にはそれ以降の記憶が全くと言っていいほど欠如していた。

 無事に家に帰ってきているということは、村野が酔い潰れた自分を家まで連れ帰り、わざわざ介抱してくれたのだろうか。

 そうであれば大変な迷惑を掛けた事になる。後で謝罪の電話を入れなければ――と思いながら、柚はふらつく足で寝室のドアの前まで来ると、いきなり射し込んできた光に目を細めた。

 その瞬間。

 あ――と声を出す間もなく、無情にも目の前のドアが開いた。


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