S系紳士と密約カンケイ
「……ぶっ!?」
避ける間もなく見事に顔面を強打し、その場にうずくまった柚は、衝撃で一瞬頭痛が吹き飛んだ。その代わり、燃えるようにおでこが熱くなっている。痛みに痛みを上乗せしたような形であるが、どちらにしてもあまり歓迎できるものではない。
(……いつからウチは、自動ドアになったんだろう? それより、アザになったらどうしよう。明日仕事なのになぁ……)
二日酔いの頭で的確な状況判断ができないのも無理はないが、あまりにも間抜な感想を持っていた柚は、しかしそこでハタと気付く。
一人暮らしの部屋で、なぜ勝手にドアが開くのだろうか。
(まさか、どっ、泥棒――!?)
「……おい。大丈夫か」
「……え」
嫌な想像に一瞬で蒼褪めた柚の耳に、心地よい低音が届いた。