僕が男だったら
掛軸を取りに離れに向かった。うちは昔からの古い家だ。離れまで少し歩かなくてはならない。

『にしても、広い家だな。』

「ただ古いだけだよ。今は家族四人しか住んでないから、部屋余りまくってるし。」

『さっき、お父さんとお兄さんはいないと言ったが?』

「あぁ、父さんは仕事、警察官してる、兄さんは大学の合宿中。手伝いに帰ってきてほしいよ」
他愛のない話をしながら、掛軸を飾っていった。

それが多い事、今回どんな規模だよ。

「じゃぁ、終わったし。名簿見てその人達の場所割り振りするか」

『うん。』

「疲れた?俺だけでもこの仕事できるから休むか?」

『いや、着物はそこまで着なれないから。袴ならいいんだが』
俺は、彼女が着物ということも忘れすたすた歩いていた。

「ごめん。俺…着物っていうのも忘れて。マジでごめん。」

『いや、構わない。並樹は着物をよく着るのか?』

「家に居る時はたいてい着物。」
< 21 / 24 >

この作品をシェア

pagetop