守るべきもの
私は、1人でカルテの整理をしていた。


とっくに勤務時間は終わっていたが、家に帰る気もしなかった。


忙しい1日で良かった。何も考えずに仕事に集中出来た。


肩を揉みながら椅子から立ち上がった。患者の様子でも見に行こう。


1人1人、ベッドを回りモニターを見て、急変していないか確かめた。


静かな夜だ。帰って、ゆっくりとお風呂に入ろう。そう考えていると、若い看護師が話し掛けて来た。


「先生って、狙われてるって、本当ですかぁ?」

私は、驚きながらも、なんて、間が抜けた話し方なんだろうと思っていた。


「先生って、可愛いからストーカーとかかも。気を付けて下さいよぉ。」

少しも心配なんかしていない様子だった。


そうか…共通点などはなく、1人1人に恨みを抱いているのかもしれない。


考えられるのは、医療ミスだけど…


私は、頭が混乱して目眩がした。

もう、帰ろう。


宿直医に一言告げ、病院を後にした。
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