彼と彼女と彼の事情
「よしッと!
俺、そろそろ帰るわ。このままじゃ終電ヤバイし。
じゃ、またな!」
「そっか。今日はホントにありがとうね。
あのお店、美味しかったね!ピエール…なんだっけ?イケメンシェフ、噂通りめちゃくちゃかっこ良かったね」
「いい加減、名前、覚えろよな!ピエール・マルコリーネさんだぞ!ホント、片仮名に弱いよなぁ」
「すみません」と、ペコリと頭を下げた。
昔から片仮名の名前を覚えるのは苦手だった。
大好きなケーキ屋さんだって、あちこちのお店がミックスされて、間違った覚え方をしていたし。
当然、高校の世界史なんて、言うに及ばない。
勝手に、世界の偉人さんを作っちゃうし。
『君は想像力が豊かだね』
世界史の先生に、答案用紙を返された際、嫌味まで言われる始末。