彼と彼女と彼の事情
「それじゃあ、またな!
ちゃんと鍵はロックしとけよ!物騒だからな。
また何かあったらすぐに連絡してこいよ!いいな?」
「うん」
――そう言い残し、賑やかな声とともに、玄関のドアがパタンと閉められた。
途端に、静まり返った部屋。
リビングには、郁人がいたことを示す、飲みかけのカフェオレと温もりが残っていた。
重い空気を壊したのは、やはり郁人だった。
でも……
なんとなく、心に引っ掛かるものがあった。
あれこれ考えていたらその日は、寝付くまでにだいぶ時間がかかった。