彼と彼女と彼の事情


「それじゃあ、またな!
ちゃんと鍵はロックしとけよ!物騒だからな。
また何かあったらすぐに連絡してこいよ!いいな?」 

「うん」


――そう言い残し、賑やかな声とともに、玄関のドアがパタンと閉められた。


途端に、静まり返った部屋。

リビングには、郁人がいたことを示す、飲みかけのカフェオレと温もりが残っていた。


重い空気を壊したのは、やはり郁人だった。


でも……


なんとなく、心に引っ掛かるものがあった。


あれこれ考えていたらその日は、寝付くまでにだいぶ時間がかかった。



< 101 / 300 >

この作品をシェア

pagetop