彼と彼女と彼の事情
〈8〉再会
それから数日後――
仕事を終え、帰り支度をしていると、私の携帯が鳴った。
忘れもしない、あの人を示す着信音。
いまだに電話識別機能を変更していなかったから、だいぶ前の流行り曲が流れ出しヒヤリとした。
でも、それ以上に心が震えた。
携帯のメモリを削除することのできなかったこの半年――
もしかしたら、連絡があるかもしれない……という一縷の望みから。
受話器を持つ手が、微かに震える。