彼と彼女と彼の事情
神田川沿いの桜並木の細い路地に車を停め、授業が終わるのを待つ隼人。 



当たり前のように、ずっと、そうしてくれた。  



隼人の負担になっていないか気になったときに、一度、尋ねたことがあった。



『俺が好きで勝手にしてることなんだから、奈緒は気にしないこと!』って、笑って言ってくれた――。



授業が終わると、友達の誘いを断り、すぐさま隼人の元に駈け付ける日々。



助手席に乗り込み、車を走らせ、渋谷や二子玉川で食事やショッピング。



当たり前だと思っていた日常が、今、とても貴重なことだったんだ……と気付かされる。 



もう、あの頃には戻れないのかな……私たち。



< 124 / 300 >

この作品をシェア

pagetop