彼と彼女と彼の事情
思わず、固唾を飲んだ。



見てはいけないものを見てしまったようで……



手にしていたティーカップが、カタカタと音を鳴らした。



「ねぇ、あれって、隼人くんだよね?!」



「…う、ん……」 



「隣にいるのって、誰?」


「………」



「もしかして、隼人くん、彼女いるの?」



千尋には、あの雨の日の、別れのことだけは話していたけれど…… 



でも、その先の――



別れた本当の理由までは、話していなかった。



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