彼と彼女と彼の事情
〈10〉心の拠り所
そのあとの林先生のフォーラムでは、全くと言っていい程、頭が働かなかった。
意見を求められるも、とんちんかんな応答をしてしまった。
恥ずかしさと先生への不躾から、その場にいるのが心苦しい程だった。
フォーラム終了後、先生にご挨拶をしたのち、
駅までの道のりを千尋と二人、あの細い桜並木を歩いた。
千尋が、私のことを気遣ってくれているのが、痛い程に伝わってきた。
隼人のことには触れず、フォーラムでの林先生の話や出席者のことばかり。
「何かあったらいつでも連絡してきてね!」
そう明るく話す千尋に、「ありがとう」と、笑顔を向け、改札で別れた。