彼と彼女と彼の事情
「なぁ、飯、食いに行かないか?」
「えっ?」
「俺さ、昼から何も食ってないんだよ。もう、さっきから腹がペコペコでさ!」
そう笑いながら、ゆっくりと私の体を離した。
二人とも自然と笑みが零れた。
「うん!私も、泣き疲れてお腹ペコペコ!」
「何、食いたい?」
「美味しいものなら何でも!」
「よし、わかった!俺についてきて」
郁人に促され、また、新宿の雑踏の中を二人で歩きだした――。