彼と彼女と彼の事情
「俺はいつもそう思ってるんだよ!マジで、この店の料理が一番美味い!」
「なんだぁ、そんなに誉めてもサービスしねぇぞ!」
と、おじさんが豪快に笑った。
「別にお世辞言ったって、何の得にもなんねぇし。
美味いものは美味いから!」
目の前に置かれた氷の入ったコップに手を伸ばした郁人は、ごくごくと一気に飲み干した。
「ありがとうね。そんなに誉めてもらっちゃって!
でも、やっぱりお母さんの味が一番でしょう?ウフフ…」
白い三角巾に割烹着姿のおばさんが、可愛らしく笑った。