彼と彼女と彼の事情
約束の時間に遅れることのない郁人だったから、少しだけ不安になった。


「何か、あったのかな……」


――と、突然、携帯が大音量で鳴りだした。 



この着信音は―――…!!   


「なんで、こんなときに……」


少し苛立ちながら通話ボタンを押した。 


「はい、もしもし?」


「奈緒!俺。今、話せるか?」


「うん」


「落ち着いてよく聞けよ!
郁人が事故った。今、中央病院にいる」


「――えっ?……郁人が事故?」


「あぁ。バイクで事故って、救急車で運ばれたんだ。でも、命に別状はないから安心してくれ。
ところで、お前ら、会う約束でもしてたのか?あいつが奈緒に連絡してくれって言うもんだから」   


「あっ……うん…」


郁人が、事故?

あの郁人が、なんで?

おまけに、バイクでだなんて……

どうして、そんな……。




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