彼と彼女と彼の事情
そんな急ぐ私を足止めするかのように、途中、何度も赤信号に引っ掛かった。



四度目の赤信号で、イライラが絶頂に達しそうになった。 


「――…ん、もう!」


ブレーキを踏む足に力が入る。 と、すぐそばで聞こえる、救急車とパトカーのサイレンの音。 



――…ハッとした!



私まで事故を起こしたのでは、話にならない。



気持ちを落ち着かせようと、ペットボトルに手を伸ばし、喉を潤した。


でも……


なんで、中央病院なんだろう?  


郁人のアパートから私のマンションまでだったら反対方向のはずなのに……。 

受け入れ先の病院がなかったんだろうか……?    


ひとつの疑念が、頭の中に沸き起こった――。




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