彼と彼女と彼の事情
だいぶスピードを飛ばしたものの、それでも、病院の駐車場に入れるまで40分はかかった。


駐車場から救急外来へと続くスロープを駆け足で走り抜け、自動ドアをくぐると――


そこには、長椅子に腰掛けた、隼人の姿があった。 


「来たのか、奈緒……」


「うん、心配だったから。それで、郁人の容体は?」

「あぁ。左膝の靭帯断裂と半月板損傷だって。全治1ヶ月ってところかな。でも、話もできるし、あれだけの事故で、軽症だったんじゃないかな」


「そっか。事故って、そんなにひどかったの?」


「あぁ。目撃者や警察の話だと、急に飛び出してきた子どもを避けようとしてガードレールに激突したらしいんだ。まぁ、自爆だけどさ。スピードも出てたみたいだし、あれだけで済んでよかったよ!」 


「………」



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