彼と彼女と彼の事情


それは、止めることのできない感情だった。 


タンスを開ければ、隼人の下着や靴下が…… 


洗面所へ行けば、お揃いの歯ブラシやコップが…… 


下駄箱には、休日に履くスニーカーや革靴用の靴べらが……


リビングには、目の悪い彼が自宅で使用するメガネや愛読書が…… 


毎月、壱万円ずつ貯蓄した二人の通帳も……


皆、家主の帰りを待つように所狭しとそこに佇んでいる。 



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