彼と彼女と彼の事情


それらを捨てることは、私には到底できなかった。 

もしかしたら…… 


『この間のは冗談だよ』なんて言いながら、笑って隼人が戻ってくるような気がして……。 


そんな確証などないのだけれど。 


でも、そんなあてのない妄想にも今は縋っていたい。

私は悪い夢でも見ているような、そんな気さえした。 

夢なら早く覚めてほしい。

そして、早く隼人に会いたい。


そう、願わずにはいられなかった。 



< 19 / 300 >

この作品をシェア

pagetop